オンラインでの研究インターンシップ経験

オンラインでの研究インターンシップ経験

こんにちは,堀藤本研究室修士1年の祖父江です。現在私はNASAのジェット推進研究所というところで研究インターンシップを行っています。この記事では「コロナ禍での海外での研究インターンシップ」という経験について,参加決定までの経緯と現在の活動について少し紹介させてもらいます。なお私は現在,ロサンゼルス近郊のパサデナという都市にいます。COVID19により現在はリモートワークですが,そろそろon-siteでの活動も緩和される見込みです。

まず参加に至る経緯ですが,2年前の冬,当時研究室の博士課程の先輩の方が同じ研究インターンプログラムに3か月参加されたことがきっかけです(現在すでに卒業されています)。その方は帰国後も博士論文と並行して参加当時の業績を論文にまとめており,定期的に現地のチームと連絡を取っておられました。そんななか昨年度の秋,たまたまチームから「このプロジェクトに向いていそうな学生インターンを探しているのだけれど,知人でそういう人はいないか」という打診が来たため,その先輩を経由して私を紹介して頂く機会がありました。欧米ではこういう場合,自分の学歴や職歴,研究内容や業績,スキル,
Webサイト等を記したCV(Resume, Curriculum Vitae)を相手方に送付するのが一般的です。先輩に私のCVを送付して頂き,約1か月後先方から「研究テーマやスキルの面ではプロジェクトにマッチしているので,滞在期間を工面する奨学金を獲得することができたらぜひ参加して欲しい。奨学金獲得のための推薦状はこちらから出そう」との返事を頂きました。結果的に私は「東京大学トヨタ高度人工知能人材育成のための海外留学奨学金」に採択されたため条件をクリアし,無事参加に至ります。なぜ奨学金の獲得を求められたかについてですが,理由としてはそういった能力を「スクリーニング」していることが考えられます。実際奨学金の応募の際には現在の研究内容や参加中に行う予定の研究テーマを記述した書類を作成したのですが,このように研究プランを提示してファンディングを得ることは現地の研究員も日々行っています。日本でも学術振興会の研究員に応募する際,こういった書類が求められるのではないでしょうか。

この奨学金の採択は昨年度の3月末に決定されたのですが,運悪くコロナ禍が世界中で広がり始める状況でした。日本の大学ですらロックダウンでどうなるのか,対面での講義は継続できるのかという状況であったため,先方に10月から1年間研究インターンを行うプランに変更してもらい,一旦M2の中間発表を終えてから休学することに決定しました。8月くらいから毎週のミーティングにも参加させてもらい,10月から日本でのリモートワークでの開始となりました。

次に現在の活動についてです。私が関わっているプロジェクトは”DARPA Subterranean (SubT) Challenge”というアメリカの国防省主催の一種のロボットコンテストです。これは洞窟やトンネル,原発内部といった地下の環境に複数台のロボットを投入し,制限時間以内に負傷者を模した人形のような”artifact”を見つけ,それら”artifact”の個数と推定位置の精度のスコアで競い合うというものです。オンライン版とリアル版の2種類があり,アメリカ国内外の大学や研究機関がタッグを組んでチームを作り,ロボットとその自律システムを開発しています。私のいるチームはJPLの職員と学生インターンで構成されており,人数としては約30名弱です。

(チームのロゴ写真です)

本番のフィールドは予め知らされず通信環境も与えられないため,求められる技術要素としては①通信アンテナを落としながらネットワークを構築する②スタート位置を原点として各ロボットが自己位置推定を行う③環境の地図を生成する④内部での探索ポリシーを決定し意思決定と制御を行う⑤画像認識によりartifactの位置を求める(そして入り口まで送信する),といった要素が挙げられます。これらを複数台のロボットに同時に行わせるため,ロボット競技であるにも関わらずソフトウェアの性能がほぼ全てを決定します。

10月に参加する前,私はこのうち④内部での探索ポリシーを決定し意思決定と制御を行うチームに配属されることになりました。このチームでは卑近な例で言うと与えられた環境内で「トンネルを掘りながら路線図を作り,制限時間以内にできるだけ路線図を広げながら多くの駅を訪問する」ソフトウェアを開発しています。未知の環境においてこういった意思決定を行う問題は「部分観測マルコフ決定過程」と呼ばれており,私は「トンネルを掘って路線図を作る」部分のソフトウェアの改良からスタートしています。

不幸中の幸いでソフトウェア中心の作業であったため,10月からはチームのslackでコミュニケーションを取りながら週2回全体のミーティングに参加し,それなりに研究インターンを行えています。zoomやWebexのミーティングだとどうしても対面でないと伝えにくいニュアンスのようなものが伝えられず苦労することもあります。しかしチームで共同して一つの巨大なシステムやソフトウェアを開発していく経験は物凄く楽しいです。またプログラムの規模的にシミュレーションベースであるのと,月に一回フィールドテストの結果が展開されるため,それなりに実物を意識して開発も行えています。

現在は世界中でコロナ禍により多くの学生が思っていたような研究生活を送れていないかと思います。私とは違った理由で休学を決断した,という学生もいるかもしれません。だからこそ自分の興味の持てる分野を見つけコツコツと勉学や研究に励み,この状況が終わった際に後で振り返って有意義な時間を過ごすことができた,そう思える時間の使い方ができることを願っています。

またオンラインだとこういったブログに貼れる映えのある写真が撮れないというのも辛いですね(苦笑)。

先端エネルギー工学専攻HPの管理者

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