学生が人工衛星開発に携わる機会(小泉研)

学生が人工衛星開発に携わる機会(小泉研)

みなさんこんにちは!小泉研究室 修士2年の吉竹と申します.今回は,小泉研が参加する小型人工衛星プロジェクトの話題をご紹介したいと思います.

小泉研究室は,研究と並行して衛星開発プロジェクトに携われる珍しい研究室です.研究では,主に小型人工衛星の推進機(エンジン)に関する学術的な部分を扱い,プロジェクトでは研究の成果を実際の小型人工衛星に搭載して実証することを目指しています.そして,プロジェクトで得られた知見を,再び研究にフィードバックしていきます.

これまで参画したプロジェクトとして,2014年の小型衛星「PROCYON」の開発がありました.PROCYONは50kg級小型衛星では世界初となる,深宇宙探査衛星です.小泉研としては推進機であるイオンスラスタの開発を行い,宇宙での作動実証を行いました.

現在進行中のプロジェクトは,6Uサイズの超小型人工衛星「EQUULEUS」の推進機である「AQUARIUS」の開発です(ややこしい).EQUULEUSに関する詳しい情報は,以下のURLをご覧ください.

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EQUULEUSは,NASAが開発中の大型ロケット「SLS」初号機のセカンダリーペイロードとして選出されており, 2016年から東大とJAXAおよび各大学共同で開発が行われています.EQUULEUSの主ミッションは,太陽―地球―月圏での軌道制御技術の実証です.目的地である,月の裏側のラグランジュポイントを目指して,月スイングバイや推進機の作動をうまく組み合わせて軌道を制御します.その際用いられる推進機が,小泉研で開発している水レジストジェット推進機「AQUARIUS」なのです.AQUARIUSはレジストジェットと呼ばれる方式の推進機に分類され,水を推進剤に用いている点が画期的といえます.レジストジェットはジュール熱によって推進剤を加熱し,ノズルから排出するシンプルなもので,小型衛星に向いています.さらに安全・安価な水を使うことで,開発のしやすさを向上させています.現在,AQUARIUSはあらかた組み立てが終わり,衛星側との合流まで改良中です.

衛星の組み立て後,打ち上げまでの間に数多くの試験が実施されます.機能・性能試験はもちろん,打ち上げ~運用までに衛星が曝される環境を模したストレス試験が行われ,すべての試験に合格することが必要になります.ストレスの例として,振動,衝撃,電磁波,熱真空,熱サイクルなどがあります.また,衛星全体を組み立てた後に初めて環境試験をすると,不具合が起きた時に対処が困難になるため,各コンポーネントで事前に試験を行っておきます.

前述の試験の一つとして,推進機AQUARIUSの振動試験に参加する機会がありましたのでご紹介します.

振動試験は福井県工業技術センターで行いました.当センターは,県内企業を支援する目的で数々の試験装置を導入しており,そのなかに大型の加振装置があります.AQUARIUSだけでなく,EQUULEUSの開発でも何度もお世話になっています.


下のプレートが前後に動き,AQUARIUSを所定の加速度で加振します.

振動試験の目的は,打ち上げ時のロケットの振動に衛星が耐えられるか,また,打ち上げ後に正常に機能するかを確認することです.打ち上げ時には10Grms近くの振動を衛星が受けることになります.特に,大型衛星との相乗りで打ち上げられる小型衛星は,大型衛星を万が一にも破壊しないように,振動試験の実施は重要な項目になります.

はじめは4日程度で終わる予定でしたが,現地に着いてから部品が取り付けられないトラブルが発生し,部品の再加工をしたり,東京から応援を呼んだり,悪戦苦闘した結果,予定がずるずる延びていきました.振動試験は正しく実施しないと,AQUARIUSそのものを破壊するリスクを伴っていますから,プレッシャーを感じる日々でした.

肝心の衛星打ち上げは,NASAのSLSロケットの予定しだいとなっており,現在は2020年に予定されています.みなさんにEQUULEUS打ち上げ成功,運用成功という明るいニュースをお届けできるように,頑張っていきたいと思っていますので,応援よろしくお願いします!!

先端エネルギー工学専攻HPの管理者

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