2018年10月に着任しました

2018年10月に着任しました

2018年10月1日に先端エネルギー工学専攻に着任しました,斎藤と申します.9月まで,ドイツのマックスプランク研究所で働いておりました.初回となる今回のブログでは,ドイツでの研究生活を紹介させて頂きたいと思います.

マックスプランク研究所はドイツの基礎科学分野の研究組織で,「大学で研究するには規模や性質的に難しい」分野に特化した84の独立した研究所があります.そのうちプラズマ物理研究所(IPP)は,南部のミュンヘン近郊にあるガルヒンと,北部のバルト海に面したグライフスヴァルトに二ヶ所の拠点があります.私の形式上の所属先はIPPグライフスヴァルトで,「ステラレータ周辺プラズマとダイバータ物理部門」の長であるデンマーク人の上司の下で働きました.「ステラレータ」とは核融合装置の種類の一つで,日本にも岐阜県の核融合科学研究所に類似の大きな実験装置があります.IPPのWendelstein 7-Xは,2015年に完成した世界最大の装置です.

南ドイツのガルヒンの町並みの遠景

が,私の研究テーマはステラレータとは直接の関係は無く,ガルヒンにて陽電子(電子の反粒子)を使った基礎実験に従事しました.ガルヒンには,IPPの他にも同じくマックスプランクの量子光学や「地球外物理」研究所,ミュンヘン工科大学(建物内の巨大な滑り台の写真をご覧になった方が居るかもしれません),ヨーロッパ南天文台の本部等の教育研究機関が立ち並び,町の人口18,000人に対して20,000人の学生と研究者が活動していると言います.

ガルヒンのミュンヘン工科大学は,熱出力20MWの研究用原子炉を中性子源として運転しており,この中性子ビームを利用して陽電子ビームを作り,表面科学の研究に使用しているグループがあります.こうした陽電子が,地球磁気圏のようなダイポール磁場に極めて長時間閉じ込め可能である事は,先端エネの吉田・西浦研究室のRT-1装置による純電子プラズマ実験で実証されました.陽電子を同じ数の電子と閉じ込める事で,「ペアプラズマ」という新しい種類のプラズマの実験研究が可能になります.

陽電子ビームを使った実験風景

私は,ダイポール磁場を用いた陽電子プラズマ実験の立ち上げのため,2013年にIPPガルヒンに赴任し,5年と少しドイツで暮らしました.純国産で育った私から見て,研究や日常生活で接したドイツ人の習性として,「言葉」に対する非常な信頼を印象深く感じました.研究上の手続きに関しても,些細な物事でも都度ごとに論理的に説明して交渉ベースで決める事を求められ時間が掛かる一方で,正当な(理由を滔々と述べた)要求ならば後腐れなくすんなりと受け入れられる事もありました.実験作業の際には,最初に細かい点まで議論して計画を決めて,合意に達した後は計画に従ってものすごいペースで仕事を片付ける(そして夕方には仕事を終えて帰宅します,ただし朝は早いです)傾向がありました.ガルヒンでの実験は,写真にあるプロトタイプの装置を用いた陽電子入射試験が一段落し,超伝導コイルによる新しいダイポール磁場装置の開発が継続して進められています.

先端エネルギー工学専攻HPの管理者

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