たまごからくちばしが出た

たまごからくちばしが出た

みなさま、こんにちは。鈴木研究室です。今回はJAXA宇宙研、日大、東工大、大阪大の研究室仲間と共同で開発している超小型衛星の状況について話をしたいと思います。
鈴木研の守備範囲は流体力学全般ですが、特に大気圏突入とそれに関する超高速の空気力学を得意としています。この12月に地球に帰還するはやぶさ2のサンプルリターンカプセルに代表されるカプセル型飛行体とは違った形式の大気圏突入機をデザインしたいと思い立ち、ふた昔ほど前に、傘のように広げて使う空気ブレーキ(エアロシェル)を考案しました。乗り物ネタは計算機や実験室での研究だけでは、どうしても説得力が薄いので、実際に飛ばして、その効能を実証しようと、JAXAの大気球、観測ロケット、国際宇宙ステーション日本モジュール(きぼう)を利用させていただき、20年近く仲間の研究室といろいろとやってきました。
直近では2017年にきぼうに装着されている超小型衛星放出装置(JSSOD)により3Uサイズ(超小型衛星の規格で1Uが10cm角。3Uなら10cm×10cm×30cmです)で4kgの超小型衛星EGGを飛ばし、宇宙で直径80cmの傘を広げて地球の大気圏に落下させました(もちろん、上空でちゃんと燃え尽きさせ、地上に迷惑をかけたりはしませんでしたよ)。今、開発中のBEAKという名前の衛星はEGGの2代目、進化バージョンです。先代EGGも携帯(イリジウム衛星電話)とメールを使った地上アンテナ要らずの衛星運用、ガスで膨らませる浮き輪方式の傘型エアロシェルなど仕掛け満載でしたが、2代目BEAKは、宇宙で傘を広げ、さらにそれを分離する実験、熱で自動展開する形状記憶合金フレームのエアロシェル、超小型の姿勢制御などと、さらに凝っています。その中で鈴木研が担当したのは水を使った超小型のロケットエンジン(TWEETという名前がついています)です。写真は先月行われたEM(本物FM=フライトモデルを作る前に設計を検証するエンジニアモデル)の写真です。
研究室の専門は空気力学であり、ロケットエンジンはど素人なので最初は小泉先生の研究室に学生リーダーが弟子入りし、初歩から教えてもらいました。水をヒーターで温めて水蒸気を作り、それを噴射して推力を得ます。BEAKには他に搭載するメカがたくさんあり、とにかく小さく、軽いものということで、素人の大胆さを持って設計しました。重さも170グラムを切って、これなら重量オーバーで地上で留守番、ということにはならなそうです。
コロナ禍で開発がどうなるかとヒヤヒヤしていましたが、流行の前に基本的な設計コンセプト確認が済んでいたのが幸いし、最小限の実験室作業で開発を進めることができました。とは言え、これから他の機器とともにFMを作って衛星として完成させ、様々な環境試験をクリアしなければなりません。来年春〜初夏に無事、衛星を宇宙ステーション行きの船便に引き渡すことができるか、まだまだ気の抜けない、でも、とても楽しい(あとから思い返せばですが)日々が続きます。

先端エネルギー工学専攻HPの管理者

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