AAPPS-DPP2020で磁気リコネクションに関する特別セッションを開催

AAPPS-DPP2020で磁気リコネクションに関する特別セッションを開催

10月26日〜30日AAPPS(アジア太平洋物理学会)-DPP(プラズマ物理部門)の年会がオンラインで開催され,小野靖研究室が現在テーマとしている「磁気リコネクション現象の物理と応用」が特別セッションCD(クロス・ディシプリン)として取り上げられ,1週間に渡って講演が行われました。磁気リコネクションリコネクションは,高い導電率を持つプラズマ中で反平行の磁力線がつなぎ変わる現象で,プラズマが磁場構造を変える際にその時間を決め,大きな磁場エネルギーを短時間で熱・運動エネルギーに変えてしまう巨大なエネルギー変換器であることが,注目を浴びています。日本から小野,中国からZhong, 韓国・米国からParkがまとめ役となって,1週間のセッションをまとめ,日中韓に加え,米国,英国,ドイツ,オーストリア,ノルウェー,オーストラリア,台湾等を初めとする多数の国の研究者が参加しました。
特筆すべきは,室内実験(基礎実験,核融合プラズマ実験),太陽観測,地球磁気圏観測,天体観測,理論・シミュレーションの異分野の研究が磁気リコネクションという共通の物理の解明のために密接に連携したことです。図1のように太陽観測は2次元観測は得意でも局所計測が苦手,磁気圏観測は局所計測は何でもできるが,分布計測が苦手,理論は何でもテストできるが,理論仮定から外れるのが苦手,実験は,何でも仮定無くテストできるが,磁気レイノルズ数などに制約があるなど,磁気リコネクションの解明には得手不得手があります。これらの4分野が,共通の物理としての磁気リコネクションの解明,さらに応用に向けた協力が進んでいます。
小野研究室関連の教員・学士も,磁気リコネクション速度解明,その巨大な熱の解明や動的リコネクションへの遷移,それを核融合プラズマの点火への応用して2300万度を得た成果,新しい計測手法の提案・実証まで10人が成果報告を行いました。学生もポスター発表ではなく,全員,オーラルプレゼンテーションとなり,関連する招待講演も,共通セッションを加えて6件になりました。
特に,リコネクションの巨大な加熱を核融合プラズマの加熱に応用した英国核融合ベンチャー企業Tokamak EnergyのST-40装置を用いた東大との日英共同実験で,コロナ休止前までに2300万度を出した成果,そのリコネクション加熱のイオン加熱が磁場の二乗に従って大きくなると言うスケーリング則の実証,想定より大幅に大きな加熱領域を持つイオン加熱や,局所化した電子加熱・加速等,高エネルギー粒子の,初めてトーラスプラズマ全域をカバーできる粒子シミュレーションなどなど多くの成果が報告されました。
今後の問題は,コロナ再拡大の中,Tokamak Energyとの日英共同実験や日米共同実験がいつ再開できるか?次の磁気リコネクション国際会議MR2020がいつ開催できるか?ですが,ワクチン開発も最終段階での好成績がアナウンスされており,期待しているところです。

先端エネルギー工学専攻HPの管理者

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